第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
それでもグッと手を握って来て、轟の体がゆらに寄った。
ゆらは咄嗟に体を引いて、握られている手に、拘束具を付けた。
「…何だ、これ…。」
轟は繋がっている拘束具を見ながら、戸惑った様に聞いた。
「…咄嗟に…。」
咄嗟に出してみたものの、心臓の鼓動は治らない。
轟の顔が、ゆらの肩に乗った。
拘束具されていない右手が、ゆらの背中の服を掴んでいる。
沸き起こる感情をグッと抑えている様に、轟は動かずにいた。
「……いい匂い…。」
ゆらの首筋から、彼女の匂いがした。
轟はスッと、顔をゆらの首筋に擦り寄らせた。
ビクッと、ゆらの肩が小さく跳ねた。
「…秤、少しこのままで…。」
轟は確認する様に、自分の唇に、ゆらの肌を滑らせた。
首筋より、頬を掠めた時が、1番胸が高鳴った。
轟は、顔を上げて、唇が触れていた頬を触ると、ゆらの顔を覗き込んだ。
ゆらは顔を真っ赤にさせて、轟から目を背けている。
同じ紅潮した顔でも、自分を縛って見上げていた、恍悦した表情とは全然違った。
余裕が無く、ただ顔を赤くしているゆらに、轟は昂りと顔を近づけた。
轟の唇が、ゆらの唇に触れた。
ゆらは轟のその行為に、安心した。
昂った気持ちを落ち着かせる行動は、一般人のソレと自分の衝動は同じ様だったから。
(…轟も今、あんな衝動が起きているのかな…。)
轟のキスを受けながら、ゆらはそんな事を考えた。
不思議と、先程までゆらに感じていた鼓動は少し治った。