第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
その轟の顔に、ゆらは胸が高鳴る。
コレは個性からくる高鳴りとは別だ。
「…ごめん。」
ゆらは体を起こして、轟を見た。
妙な気分だった。
個性からくる高揚感の疼きは、抑える術を知っている。
ゆらは大きく深呼吸して、鎖を持って、もう一度縛りれている轟を見て、心を落ち着かせようとする。
フッと、轟がゆらを見てきた。
相変わらず、口元は隠しているが、紅潮している顔がゆらの目に入る。
縛られている姿を見なくても、その顔だけで、居心地の悪い動悸が治らない。
ゆらは持っている鎖をギュッと握った。
「っ…イテ…。」
力が入ってしまったのか、締め付けられた轟から言葉が漏れた。
「ごめん…。」
さっきから謝ってばかりだ。
ゆらは鎖を轟から解いた。
「…もういいのか?」
轟が意外そうに言う意味は、ゆらが顔を赤くしながら、ギュッと目を顰めているからだ。
全然、足りていなそうだ。
「…まだ、していい?」
ゆらはそう言うと、轟の返事を聞く前に、彼の手を取った。
荼毘の時の様に、彼に触れれば落ち着くと思っていた。
それは間違いで、轟の手に触れた途端に、先程よりも鼓動が激しくなり、苦しさからゆらはギュッと手を握った。
轟に触れると、居心地悪さの方が強かった。
離れた方が、気分が落ち着きそうだ。
ゆらは轟の手を離そうと、手を緩めた。
「?!」
離れようとするゆらの手を、轟の手がギュッと握った。
ゆらは驚いて、轟を見ると、彼もまた顔を赤くして、ゆらと同じ様に、居心地の悪い顔をしている。