第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
ゆらは鎖を出して、轟に巻き付けた。
轟はやはり戸惑った顔をして、ゆらを見る。
ゆらは胸がギュッとなり、心地よい高揚感が全身を襲った。
やはり顔が好みなのも作用するのだろうか。
左の蒼い目が、荼毘と少し似ている。
荼毘が高揚感を昂らせる衝動を与えるなら、轟は高揚感を気持ちよく落ち着かせてくれる存在だ。
「…はぁ…♡」
ゆらはため息の様な吐息を吐くと、布団に倒れ込んだ。
轟は体がビクッとなって、動揺した様にゆらを見下ろしている。
ゆらは目元に置いた腕を少しずらして、轟を見上げた。
可哀想に、訳も分からずに縛られて、目の前の女の行動に理解が出来ないでいる。
大丈夫。
こうして轟を見上げているだけで、衝動は抑えられる。
ずっとこの高揚感で我慢出来ていたのに。
ゆらはギュッと目を顰めた。
それでも、同級生を傷付ける事はしなくて済みそうだ。
それだけは、安心出来た。
「…轟、怖がらないで、見てるだけたから。」
不安が轟の顔に、ゆらは少し悲しそうに言った。
ゆらの個性の衝動は、一般人からしたら、気持ちの悪いものだろう。
それは分かっているので、なるべく彼らには危害がない様にしている。
触らないから、その不穏な者を見る目を、やめて欲しい。
「…いや、怖がってるんじゃない…。」
ゆらの言葉に、轟がモジッと言った。
心なしか、顔も赤くなっている。
「?」
ゆらは轟の次の言葉が出るのを、不思議そうに見ていた。
「…男の部屋で、簡単に横になるのはどうかと思うぞ…。」
轟はゆらから顔を晒して、口元を腕で隠しながら、顔を真っ赤にして言った。