第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
もし、部屋に行って、彼が起きて待っていたら、もう治りはつかないだろう。
ゆらは意を決して、轟のベランダまで跳んだ。
足音なく、ゆらは轟のベランダに立った。
ここからどうしようか、いきなり入るより、やはりノックをした方がいいのだろうか。
ゆらは少し困っていると、ガラッと窓が開いた。
少し困惑気味の轟が出てきて、ゆらは轟に誘われる様に、彼の部屋の中に入った。
(…和室の構造の部屋なんてあったのか…。)
自分の部屋の作りとは違う轟の部屋に、ゆらはしばし部屋を見渡した。
「… 秤、よく大丈夫だったな。」
小さい声で轟が言った。
この場合の質問は、寮内をこんな時間に歩き回って大丈夫かと言う事だろう。
雄英のセキュリティーは外部に対しては、物凄く高いが、校内に関しては、そこまででも無い。
外に出ようとしない限りは、ある程度気を付けていれば、寮内を行き来する事は難しく無かった。
こんな風に、隣の寮に乗り込む位なら、ノーリスクで出来る。
そんな事をしようとするのは、ゆら位だろう。
「…後悔してる?」
目の前の優等生は、悪い事をしているみたいで、落ち着かない様だ。
この前、爆豪を助けに行った大胆さは、何処にいったのだろうか。
「…大丈夫…。」
轟はそう言うと、布団の上に座った。
ゆらも、轟の前に座り、少しお互いに見合った。
本当は早く轟を縛り付けたい。
でも、申し出てくれた轟の気持ちが落ち着くまで、ゆらは轟を待った。
「…腕は動く様にやってくれ。」
腕まで拘束されるのは、屈辱感が増す様だ。
その分、ゆらの昂りは半減するが、それはしょうがない。