第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
B組の夕飯後に、団欒を迎えるが、ゆらの気持ちはすでに轟に向かっていた。
過ぎる時間が遅く感じる。
ゆらは一足先に自分の部屋に向かった。
ベットだけしか無い、簡易的な部屋だった。
どうせ眠るためだけの部屋なのだから、他の装飾品は必要ない。
早く部屋に帰ってきたとして、流れる時間は同じだろうに。
ゆらはその部屋で、時間が経つのを、高揚する気持ちを抑えて待った。
周りから物音がしなくなった。
皆んな寝静まった様だ。
ゆらはムクッとベットから起き上がった。
部屋のベランダを開けると、ゆらは外に出た。
空を見上げると、月が半分欠けていた。
荼毘と見たあの時の月は丸かった。
アレから半月、荼毘に出会えていない事に、ゆらは目を細めた。
雄英のセキュリティーはしっかりしているはずだ。
そのセキュリティーを掻い潜って、外に出られる。
ホークスにねだった、ゆらの特権だ。
それを同級生への昂りの為に使うと言ったら、ホークスのあの美しい顔は歪むだろう。
ほんの少しだけの罪悪感を感じて、ゆらは4階のベランダから中庭に飛び降りた。
足音すら聞こえない程の静かさに、ゆらの気持ちは更に高揚を浮かべる。
轟の部屋の場所は教えて貰っていた。
ゆらはA組の寮を見上げて、ほとんどの部屋が電気が付いていないのを確認する。
こんなコソコソとした行動をとるのは、まさにヴィランの様だと、ゆらは自笑した。
轟の部屋を見上げると、彼の部屋も暗かった。
ゆらは目を細めて轟の部屋を見ながら、彼が部屋の通り、寝ている事を願った。