第5章 蒼炎を逐う※轟焦凍
ゆらは大きく深呼吸をする。
それは轟の為だから、気にしないで欲しい。
「ありがとう轟、優しいのね。
でも大丈夫だから。」
ゆらの精一杯の強がりを、轟に伝えた。
轟はそう言ったゆらに目を顰めた。
「…秤、大丈夫だから…。」
轟の言葉に、ゆらは倒れそうだ。
そこまで言う、被食者をどうして見逃せる事が出来るのだろう。
ゆらはスッと轟に近付いて、彼の肩を掴んだ。
轟の耳に顔を近付けて、ゆらは抑えきれない欲望を、轟に伝えた。
「…今晩、轟の部屋に行くから。」
そう言ったゆらに、轟は目に見えて動揺する。
外が嫌なら、何処で縛れと言うのだろうか。
ゆらの言葉の意味を理解すると、轟は顔を赤くして頷いた。
(…夜まで待てるだろうか…。)
轟のその表情を見ながら、ゆらはギュッと目を顰めた。
ああ、だけど待たなければいけない様だ。
この可愛らしい被食者を、思う存分喰らうには、時間がたっぷり必要だ。
ゆらはそう言うと、轟から離れて、歩き出した。
今夜は荼毘の事を考えずに、寝れそうだ。
荼毘を思って、情緒が疲弊しているのは本当の事だ。
ここ数日で、ゆらは1番鼓動が高鳴った。
ゆらは気持ちを抑えて、お楽しみは夜にとっておく事にした。