第4章 蒼炎を追懐する :ホークス
確かに、この状況で、ゆらが爆豪に付いても、何ら不利な体制は変わらない。
ゆらの個性を知っている荼毘ですら、平然と目の前に立っている。
ゆらは大きく息を吐いた。
何処までいっても、目の前に居るヴィラン達は、捕食対象にしか見えない。
そこに、心を寄せた荼毘に対しての申し訳なさも無い。
狩れる瞬間があるなら、見逃さない。
誰かに横取りされる前に、荼毘に鎖を縛るのは自分だけだ。
ゆらはたまたま対峙しているから、ヴィランの敵になるに過ぎない。
ヒーローにその対象がいたら、何も考えずに同じ事をする。
そんな衝動を起こさせない、爆豪が、今はとても頼もしい。
死柄木は爆豪に対して、感情的になる事は無かった。
ソコにはやはり、情報とは違う死柄木の姿が見えた。
何処かでまた、死柄木が変わるタイミングがあった様だ。
死柄木が『先生』と呼んだ先に、テレビの画像が変わった。
ゆらはその画像を見て、ドクンと心臓が高鳴った。
薄暗い画面に、『先生』と呼ばれた人物の全体像は見えなかった。
だけど、彼の喋り方、彼の声に、ゆらの心臓は鼓動が治る事は無かった。
画面の奥に、死柄木を別段と感じるほどの、捕食者が居る。
その現実に、ゆらは鼓動が治らない、胸をぎゅっと握った。
本当に、彼らは何処までも、ゆらの衝動を掻き立てる。
緊縛した空気を壊したのは、1人の訪問者だった
「ピザーラ神野店です。」
誰もが一瞬、気を取られただろう。
その瞬間、壁を壊して入って来たのはオールマイトだった。
「?!」
大きな破壊音に、誰もが気を削がれた。