第4章 蒼炎を追懐する :ホークス
それがヒーローの矜持だとすぐに気が付いた。
ゆらは目を細めてその光景を見た。
先ほどまでのヴィランの圧倒的な制圧はそこには無かった。
一瞬にして、形勢が逆転する。
荼毘や死柄木が拘束されて、ヒーロー達が雪崩れの様に狭い部屋に入って来た。
爆豪の肩の力が抜るのをゆらは横目で見た。
あの爆豪ですら、現れたヒーロー達にその荷を預けた瞬間だった。
まだ目の前にヴィランがいるのに。
オールマイトが目の前に居る。
それだけでこんなに気持ちが晴れるのだと、ゆらは体感した。
死柄木も荼毘もヒーローに拘束されている。
その光景を見て、ゆらは目を細めた。
圧倒的なヒーロー達の矜持の前では、学生である自分は、ヒーローに肩を抱かれて、ただの被害者へと成り下がる。
ゆらは爆豪に、苛立ちを覚えた。
何故、肩の荷を下ろしたのだろう。
何故、目の前の敵がいるのに、警戒を解いたのだろう。
それは少年が敵のテリトリーの中で、極限状況に居て、当たり前の安堵の気持ちだ。
それでもゆらは、ソレが理解出来なかった。
目の前の死柄木と荼毘を拘束するのは自分でなければならなかった。
そんな気持ちが顔に現れていたのだろう。
ゆらの肩に手を置いたヒーローは、困惑した顔をして、荼毘を見つめるゆらを見ていた。
今度は、ヴィラン達の動揺が、その部屋を支配した。
グラントリノが、簡単に荼毘の意識を奪った。
荼毘が他のヒーローに捕獲される事に苛立ちを覚えて、ゆらはぎゅっと拳を握った。
危うくグラントリノを攻撃する所だ。
ソレは荼毘を助けたいという気持ちでは無く、目の前で自分の獲物を取られた感覚だった。