第4章 蒼炎を追懐する :ホークス
死柄木が目を細めて、ゆらを見た。
ああ、やはりまだ折れない死柄木に、気持ちが昂った。
荼毘に感じた感情とはハッキリ違った。
喰うか喰われるか。
荼毘はこの衝動を許さないだろう。
それでも、目の前の死柄木を喰みたい気持ちは抑える事ができなかった。
ゆらは唇を開けて、死柄木の顔に近付いた。
分かる。
この唇が触れたら、死柄木はゆらに噛み付くだろう。
ただ捕食されない死柄木に、ゆらは目を細めるが、死柄木が自分に与える攻撃を、ゆらは加味していなかった。
喰らわれても構わない、更に喰らい尽くすだけだ。
ゆらの唇が、死柄木に触れる瞬間に、2人の時間に亀裂が入った。
ゆらは死柄木の部屋に入ってきた荼毘を見た。
「…準備が出来たぞ。」
荼毘の準備が何か分からなかった。
ゆらが感じたのは、これ以上死柄木を喰らう衝動が、荼毘によって治った事だけだった。
死柄木はグッとゆらの髪を掴んだ。
「コイツは置いておけばいいか?」
ゆらを荼毘に見せつける様に、死柄木は言った。
「……連れて行こう。」
もしここにゆらを置いていったら、ゆらは間違いなく、ここから逃げるだろう。
ゆらはぎゅっと目を顰めて、荼毘を見た。
荼毘は手を出すと、ゆらに言った。
「ゆら、来い。」
ゆらは荼毘の言葉に、すぐに死柄木の拘束を解いた。
そして荼毘の手を掴むと、荼毘と自分の手首を再び拘束する。
荼毘の手をぎゅっと触って、ゆらは荼毘を見上げた。