第22章 哀傷と蒼炎※焦凍
沈黙が2人の間に流れた。
こうして全てを話してしまって、焦凍がどんな反応をするのか分からなかった。
何か言って欲しい。
でも何も言わないで欲しい。
ああ……どうやら……。
こんなにも焦凍から離れてしまった癖に、まだ私は焦凍の腕にしがみ付いていたい様だ。
焦凍を失うかもしれないと思って初めて気が付いた。
自分は焦凍も好きだった。
荼毘とは全く違う感情だったけど、焦凍に触れて過ごす時間は何より幸せだった。
だけど、今更そんな事に気が付いてももう遅かった。
何度も戻れるチャンスはあったのに、その度に荼毘の腕の中に入っていったのは自分だった。
焦凍が今の様に傷付いた顔をすると分かっていながら……。
ゆらは俯いて目を伏せている焦凍の顔を見ながら、また涙が流れた。
青白い顔をして、ゆらが話した事を頭の中で整理しているのだろう。
その焦凍の無言に、胸が押しつぶされそうになるのに、自分から焦凍に縋り付く事なんて出来なくて、ただ彼からの言葉を待った。
「………ゆらは……。」
ポツリと言葉を発した焦凍の拳が握られた。
その様子を目を顰めながら、彼の言葉をまだ待つ。
「……ずっと荼毘が好きだったんだな……。」
ゆっくりと、小さな声で焦凍が話した。
その言葉は、今までのどんな言葉より、ゆらの胸を痛めさせた。
自分と居る時、ゆらはどんな顔をしていたっけ。
俺が笑えばゆらも笑ってくれて、短い時間でも沢山抱き合えて。
そんな時を2人で過ごしていたら、もしかしたらゆらも自分を好きになってくれなのでは無いかと……。
そんな期待をしていた。