第21章 オリジン※荼毘・死柄木
(……駅……静岡か……。)
ホークスはゆらを探す為に飛ばしていた剛翼をしまった。
ゆらを疑っていた訳では無い。
だけれども、部屋から居なくなったゆらが向かった先が焦凍の所だと言う事実に、心底安堵した。
まだゆらが抗おうとしているなら大丈夫だ。
ゆらはヒーローで居られる。
本当にそうだろうか…。
ホークスは自分が見てしまった光景を思い出して目を瞑った。
自分はずっとゆらの加虐心と上手く付き合っているつもりだった。
気分が昂揚した時は、その欲望を満たして満足させていたと思っていた。
自分が言えば、ゆらはその加虐心を抑えられると自惚れていた様だった。
実際にゆらは死柄木と出会って、その衝動を満足させれる術を知ってしまった。
それはもう、決して忘れる事が出来ない甘美な快楽だっただろう。
アレは言い聞かせて押さえつけれる様な、そんな衝動では無かった。
死柄木と荼毘と出会って、ゆらは明らかに個性を伸ばした。
やっと自分の渇きを潤してくれる。
そんな対象を見つけたからだ。
荼毘が言った通りに、ゆらの個性はヴィラン戦争において明らかに脅威になる。
ヴィラン側に居るのか、ヒーロー側に居るのか。
ゆら1人で、お互い状況が反転するだろう。
ホークスは大きくため息を吐くと、ソファに座り込んだ。
早く復興支援に行かなければいけないのに、足が動かない。
自分を待っている民間人の為に、この腰を上げなければいけないのに、今はとても重かった。