第21章 オリジン※荼毘・死柄木
ゆらは、簡単に壊れる様な弱い生き物に興味は無い。
ゆらの衝動を刺激するのは、いつも簡単に壊れない強者だ。
ゆらの他傷行為はライオンが戯れる事と同じだ。
楽しく戯れていても、その牙と爪で相手は簡単に命を落とす。
飼い猫が戯れて噛み付くのを、優しく言葉で諭してきても本能で反応すれば、簡単にその牙と爪を刺してくる。
それと一緒だ。
初めて本気で戯れても、壊れない相手は楽しかったか?
気を抜くと、ゆらにそんな言葉を投げかけてしまいそうだった。
戯れを楽しんだ後の気怠そうな死柄木を見たら余計に怒りで腕の中のゆらを掴み潰してしまいそうだ。
ホークスは大きく息を吐くと、いつも通り、ゆらに気取られない様に声を出した。
「大丈夫だから……もう帰ろう……。」
自分ではゆらの衝動を満たしてあげれなかった。
ホークスと戯れて満足していた頃のゆらが昔の様で、ホークスの声は少しだけ…。
いつもより低かった。
たったそれだけの変化でも、ゆらはホークスの心情を汲み取ってしまう。
自分の個性に対する周りの反応を、ずっと気にして生きてきたゆらを騙す事なんて出来ないと分かっていたのに。
今自分に出来る事は、そんな事しか出来なかった。
もうゆらはホークスでは満たされない。
それをハッキリとこの目で見てしまったのだから。
一旦、荼毘達と離したくて、ホークスはそのままゆらを連れ帰る。
掛ける言葉を失って、ただ泣いているゆらをベットに寝かせた。
そして、その部屋を出て、再び部屋に入った時に。
ゆらはホークスの前から姿を消した。