第20章 蒼炎乱舞※死柄木②
だから死柄木は危険なのに。
後ろからバッと出された手に思わず、体が反応した。
そして自分でも無意識の内に、鎖は死柄木の腕を締め付ける。
死柄木と繋がった瞬間に気が付いた。
ああ…。
荼毘はコレを望んでいたんだ。
急に血が逆流した様に全身を昂らせる。
手のひらから見える死柄木の目を見つけると、この目の前の捕食者を自分のモノにしたい気持ちが全身を駆け巡った。
鎖で繋がれた腕が絡まり、死柄木の手を掴んだ。
もう一方の手は互いの急所めがけて伸びていく。
スローモーションの様なその光景に、気が付いたらゆらは死柄木にまたがり、彼を見下ろしていた。
死柄木の手がゆらの首を掴み。
また、ゆらの手も死柄木の首を掴んでいた。
激しく脈を打っている心臓の音が鼓膜に響いた。
衝動を落ち着かせようと吐いている呼吸は、長距離マラソンをした後の様に荒かった。
グッと自分の首を掴んでいる死柄木の手に力が入った。
ゆらはその力を感じながら、死柄木の顔に付いている手のひらに手を伸ばした。
何も抵抗せずに手のひらを外させた死柄木の顔は、あの日別れた時と何も変わっていない。
「……はっ…死柄木…。」
ギリッと奥歯を噛んで、死柄木の顔を見下ろすゆらの顔は、衝動を抑えようと歪んだ顔をしている。
「…死柄木……私はあなたを……壊したい……。」
捕まえた獲物を嬲る捕食者の様に。
その衝動に素直に身を任せたい。
それはとても甘美な誘惑で、死柄木にしか満たせないゆらの衝動だ。