第20章 蒼炎乱舞※死柄木②
「…自分で崩壊を調整出来るようになった…。」
ポツリと言った死柄木の言葉に、ゾクリと悪寒が走った。
五指に触れなくても崩壊でき、調整可能になった能力。
それを脅威として体が感じたのは、ゆらがヒーロー側だからだろうか。
「…そう…良かったね…。」
ゆらはサッと死柄木の手を払った。
そのゆらの行動を見て、死柄木の顔が歪んだ。
今まで死柄木が触れてきても何とも思わなかった。
だか今は明確に、体が拒否している。
それが死柄木に伝わったのだろう。
(荼毘が死柄木に私を会わせたかった理由はコレか……。)
図らずとも、ゆらは荼毘が望んだ様に死柄木から触れられる事を拒絶したのだ。
別にもう死柄木はゆら相手じゃ無くても、触れたければ誰でも触れるのだろう。
ゆらの個性にしがみ付く死柄木は居なくなった。
「…縛っていい…。」
死柄木がどんな表情でその言葉を言っているのか分からない。
ドクドクと脈打つ心臓を何とか抑えている。
もし、今死柄木を縛ったら、私の中の本能は死柄木をどう判断するのだろう。
今までの様な感情では無くなっている。
明らかに、死柄木を脅威としてみているのだ。
死柄木への抑えていた他虐性が爆発しそうな。
そんな怖さが体を震えさせる。
それだけは絶対にしてはいけない。
この個性が誰かを他虐する衝動があると。
そしてその衝動を抑えられずに身を任せてしまったら。
ゆらはその瞬間に全てを失う。
自身を信じていた気持ちも。
手を差し伸べてくれた人達への気持ちも。
全てを失って、ただ衝動のみに動く獣に変わってしまう。