第20章 蒼炎乱舞※死柄木②
「……なんだ…。」
「がはっ……はぁ…はぁ……。」
「また来たのか?」
頭上から掛けられる声が誰の声か顔を見なくても分かった。
自分が転がっている床は、ホークスの部屋の床ではない。
神野事件事件の時に見た、荼毘達の口から吐き出された泥。
その後に消えた荼毘達の姿。
今、自分はあの時の様に居た場所から、強制的に移動させられた事を分かった。
「……はぁ……今回は私の意思じゃないけどね…。」
咳き込んで歪んだ顔で見上げると、いつもの死柄木の赤い目がゆらを見下ろしていた。
今日は手のひらが顔に付いているので、その表情は全て見えなかった。
飛ばされた【ソコ】は、逃亡生活をしていた頃のアジトとは随分と違っていた。
綺麗な部屋に、ちゃんとした寝具とソファがあり、死柄木が拠点を構えたのだとすぐに分かった。
そんな情報聞いていなかった。
ホークスは随分とゆらに連合の情報をシャットアウトしていた様だ。
まぁ、そんな些細なことに腹を立てたりはしない。
ゆらは立ち上がって、ここが何処なのか確認する為に、窓に向かった。
「?!」
歩き出したゆらの腕を死柄木が掴んだ。
その手を見て、ゆらは幾つかの疑問点を持った。
掴んだ死柄木の指が一本無くなっている。
よく見たら荼毘と同じ様に、死柄木にも目新しい傷が沢山あった。
それより何よりも、死柄木は今五指でゆらに触れている。
なのにゆらは崩壊していない。
ゆらは疑心の目を死柄木に向けた。