第3章 蒼炎を愛慕する※荼毘
「…このクソみたいな状況を説明しろ。」
見下ろした死柄木の目に、ゾクゾクした。
自分の上に跨っているのが荼毘じゃ無かったら、喰らい付きそうだ。
「…見ての通り、自分の欲求を抑えられない、イカれた思考の抹消の持ち主だよ。」
抹消という言葉に、死柄木の目がピクッと反応した。
「…取り敢えず、服を着ろ。」
死柄木に言われて、ゆらは服を整える。
静かに喋る死柄木を、ゆらは意外だと思った。
聞いていた話だと、もっと子供っぽく、怒鳴ってくるかと思ったからだ。
「早く、この鎖外せ。」
死柄木の言葉に、ゆらは1番ショックを受けた様な顔をする。
もう少し、縛られている死柄木を見ていたい。
ゆらはそっと手を伸ばした。
腕が縛られている死柄木の手を、ゆらは握った。
死柄木の五指が触れても、個性が消えているので、破壊は起きなかった。
見上げると、目を細めた死柄木が見下ろしていたので、ゆらは手を離して鎖を解いた。
「で?お前は仲間になりたいのか?」
死柄木がそう聞くと、ゆらはキョトンとした顔をした。
「全然なりたく無い。」
ハッキリとゆらがそう言うと、荼毘の目がぎゅっと顰められた。
「だってそうしたら…。」
ゆらはニッコリ笑って死柄木を見た。
「狩れないじゃない♡」
一般人を縛っても何も面白く無い。
衝動はやはり、彼らヴィランが起こしてくれる。
「……先生に渡して、要らない個性なら…殺せ。」
どうやら死柄木は、怒鳴らないだけで、気に触っていたらしい。
(…そんな目をしたら、また縛りたくなるじゃないか。)
そう言って、背を向けた死柄木を、ゆらは笑って見送った。