第3章 蒼炎を愛慕する※荼毘
死柄木が部屋から出て行くと、荼毘は後ろからゆらの頭を掴んだ。
「…誰でもいい様だな。」
先程のゆらの行動を見て、荼毘は目を細めてゆらを見た。
「…そんなハズない、荼毘だけだよ。」
ゆらは荼毘の目を見て、その首に腕を回した。
荼毘がはっと、乾いた笑みを声に出した。
本当に、荼毘だけのはずだ。
アレは、昂った感情の中に、入って来た異物を取り払おうとした感情に感じた。
昂りを貪りつきたい縄張りに、入って来た捕食者を全身が警戒していた。
荼毘を捕食対象者と認定した個性が、死柄木は同じ捕食者として認識した。
(…はぁ、本当に面白い。)
荼毘の様な対象者も初めてだったのに、死柄木の様な対象者も、また初めてだった。
考え事をしていると、その心情を探る様に荼毘がゆらを見ていた。
ゆらは荼毘にまたがり、見下ろして笑った。
「荼毘、続きしよ♡」
そう言って、荼毘の唇に自分の唇を押し当てると、遠慮なく舌を入れて来た。
先程より荼毘が気乗りしていないのが、よく分かる。
荼毘はその不機嫌さを隠す事なく、ゆらに伝えている様だ。
ゆらは唇を離すと、荼毘の顔を覗き込む様に言った。
「縛ろうか?」
「……それでテンション上がるのお前だけだから。」
荼毘はイラッとした顔をして、ゆらの肩にかぶり付いた。
ビクッとゆらの肩が跳ねると、随分と歯形が付いた痕をベロッと舐めた。
「いつまでも、俺が喰われると思うなよ。」
荼毘がそう言って付けた痕が、ズキズキと痛んで、ゆらは嬉しそうに笑った。