第18章 蒼炎の教育②※荼毘
ゆらの手が死柄木の頬に触れた。
目を細めると、ゆらはゆっくりと死柄木に言った。
「……死柄木…、今なら壊せるよ。」
「…いい……鎖…。」
「……馬鹿だね……死柄木…。」
ゆらは鎖を出すと、死柄木を繋いだ。
「知ってた?死柄木。
私はあんたを縛るといつも、あんたを殺したくなってた。」
手に入れようと思うと、死柄木を壊す事しか思い浮かばない衝動。
荼毘のそれとは明らかに違うその特質は、死柄木にしか向かわない唯一の存在。
「……いつも俺の事そんな目で見てだぞ。」
ー今の様に。
恍悦で口角が上がり、目の前の獲物をどう処理しようか。
そんな事しか頭に入らない。
その麻薬の様に心地よい衝動を、一線超えてしまえば、決してもう元には戻れないと分かっている。
「…だから、あんたの側にだけは居れない。」
いつかいつもの戯れの延長で、死柄木を殺してしまいそうだ。
それが分かっていてなお、何故この男は縛らせてきたのだろう。
この答えを死柄木から聞くつもりも無い。
どっちにしろ、私達には不要な情報だから。
ゆらは死柄木の手からケースを取ると、薬を一個づつ取った。
「……じゃあね、死柄木。」
死柄木から鎖を外そうとした瞬間、死柄木の手がゆらの頭を押さえつけた。
押し付けられた唇に目を閉じると、ゆらは死柄木の首に腕を回して死柄木のキスを受け入れる。
これもまた、戯れなのだろうか。
いや…違うな。
珍しい。
この男が情欲のキスをしている。
「……抱いていいか?」
「…鎖取っていいなら。」
どっちが死ぬか分からない状態なら、少しはこの気持ちを誤魔化せそうだ。
スリルが大好きで、ただの好奇心だったと。