第18章 蒼炎の教育②※荼毘
死柄木はゆらの脱退に、怒りを表さないと、そんな気はしていた。
治崎の時も、真っ先に生贄にされて、肉壁にされ、元々死柄木もゆらを仲間として見ていなかった様だ。
「死柄木、餞別ちょうだい♡」
「……アホか…。」
ただ別れを伝えに来たので無い事には気が付いていたが、突拍子も無い事を言われて、死柄木も思わずため息が出る。
「ちょうだいよ、治崎から奪った『薬』、完成品?元々治崎から貰う筈だったのをヒーローに捕まっちゃったんだもん。」
ゆらもふうとため息を吐いて、使えない治崎に肩をすくめた。
「…『これ』の為にうちに入ったのか?」
『これ』と言うからには、きっとあの内ポケットに入ってるんだろう。
「そう…あまり面倒にしたく無い、大人しくちょうだい…。」
無茶苦茶な事を言っている自覚はある。
最悪死柄木から奪い取る覚悟もあった。
なのに、死柄木はスッと内ポケットから薬のケースを2つ出した。
「何で『これ』が欲しいんだ?」
相変わらず、死柄木の目が真っ直ぐにゆらを見ている。
その目から目を逸らさずに、ゆらは笑顔をやめて言った。
「私が、自由に生きる為。」
そう言った時に、少しだけ死柄木のケースを握った手に力が入った。
「…ヒーローになるのか?」
「……結果的にはそうなる。」
死柄木の目が少しだけ細くなった。
「…死柄木、今日は手のひら付けてないの?」
「別に…ただの気分だ…。」
「良かった……。」
そう言って、ゆらはさらに死柄木に近付いて、死柄木を見上げた。
「アレ外すの、少し怖かった。」