第17章 蒼炎の教育※治崎
「……どうした?」
うるさい馬鹿。
八斎會にゆらを売った張本人が、戻って来たゆらに声をかけた。
「………最悪……。」
それだけ言ってゆらは死柄木を見下ろした。
死柄木はそう言ったゆらに顔を歪めた。
ああ…どうやら今自分は死柄木に構って貰いたい様だ。
凄く嫌な思いをした今の自分を慰めて欲しいのだろう。
態度はワザと素っ気なくしているのに、その場を動こうとしない。
ああ…。
こんな時に限ってこの男はゆらに触れたいと言わない。
「……死柄木……。」
結局我慢が出来なくて縋るのはゆらの方の様だ。
「………縛らせて……。」
そう言って死柄木を見下ろすゆらに、死柄木は手を広げた。
その死柄木の行動を見て、ゆらは眉間に皺を寄せた。
死柄木に引き寄せられる様に、ゆらは彼の元に歩いていく。
死柄木にまたがり、彼をギュッと抱き締めた。
……おかしいな、鎖は出なかった。
「……早く縛れよ…。」
そうしなければ、このゆらを五指でしっかりと抱かないから。
ゆらは個性を使って鎖を出した。
何故かポロポロと涙が出た。
死柄木を巻きながらゆらの涙がとめどなく流れて頬を伝った。
「……死柄木……キスしていい?」
死柄木とは荼毘との様な関係では無い。
だから敢えてゆらは死柄木に聞いてみた。
「…いつも勝手にしようとしてるだろ…。」
死柄木が言った様に、彼に許しを乞うた事は無かった。
涙を流しながら自分を見るゆらを見上げた。