第3章 蒼炎を愛慕する※荼毘
ムクッと起き上がるゆらに、動揺したのは荼毘の方だった。
「拘束を武器にするなら、相手はどんな風に逃げようとするか、自分で試してたの。」
「…相変わらず、イカれた発想だな…。」
呆れた様に荼毘は言った。
ゆらは自分の手首が、問題なく動くのを確認すると、スッと荼毘に目線を送った。
「…荼毘…。」
ゆらは左手で荼毘の右手を握った。
右手で荼毘の顔に触れると、悲しそうな顔で言った。
「あなたは、悪い人だったのね。」
今にもキスをして来そうな距離で、ゆらは荼毘の顔を見た。
「…はっ、いいのか?拘束して無いなら、俺は個性使えるんだぞ。」
すぐに炎で、ゆらの左手を焼く事だって出来る。
そう言う荼毘に、ゆらは目を伏せて言った。
「……もう、そんな気持ち無くなっちゃった。」
それは荼毘があの夜に見た、捕食者の目では無かった。
喰らったモノを喰べ飽きた様な、そんな表情に、荼毘の心臓がミシリと鳴った。
荼毘はゆらの顔を掴んで、自分の方に向けさせる。
ゆらの口元がふっと笑ったのを見て、荼毘はそこでやっと気が付いた。
「可愛いね荼毘、そんなはずないじゃ無い♡」
自らゆらに喰らい付き、逆に囚われた事に。
再び見上げたゆらの目は、あの夜の目に戻っていた。
荼毘の右手首と、ゆらの右手首が再び拘束される。
「荼毘…。」
ゆらが荼毘にまたがり、グッと体を押し付ける。
「悪い子の荼毘のコピーに、私が何をしたか教えてあげようか?」
恍惚の笑みで、ゆらは荼毘の顔を掴んだ。