第17章 蒼炎の教育※治崎
部屋にこびり付いた血の匂いが余計に目を顰めさせる。
「……オーバーホール…ここじゃ……。」
グッと治崎の肩を押した。
治崎はゆっくりと体を離すとゆらを見下ろす。
こんなんじゃ時間稼ぎにもならない…。
明らかにこの状況をどうしようか悩んでいるゆらの顔にフッと笑った。
適当に済まさせようとするさっきまでの行動より、今の表情の方がよっぽど人間味があって面白かった。
「……そうだな……。」
治崎はスッとゆらの耳元に顔を近づけた。
「今日は何処まで出来るのか、じっくり調べたい。」
ゆらの腰に手を当てて、治崎は部屋を移動した。
ゆらは再びマントとお面を被る。
地下から上がって治崎に誘導されたまま歩くと、地上に上がるとそこは八斎會の本部だ。
そこには地下と違い、テレビで見る様な明らかなヤクザ者が治崎に挨拶している。
「……………。」
お面を被っているとは言え、周りからの視線に喉が鳴った。
そして勘違いでも無く、自分は今、治崎のプライベートルームに向かっているのだろう。
これは予想外だった。
治崎がさっき言った様に、本当に時間をかけてゆらと過ごす気でいるのだろうか。
「……人を払え。」
目的のドアの前に来ると、治崎は周りに人が居ないように命令した。
ドアの中にゆらを招き入れる。
その部屋の仕様からして、間違いなく治崎の休む為の部屋だろう。
「……ここならいいか?」
ギュッと治崎がゆらを後ろから抱きしめた。
「治崎……。」
ゆらが何か言おうとすると、その唇を治崎が塞いだ。