第17章 蒼炎の教育※治崎
ゆらはフッと笑って治崎を見た。
「連合に入った理由は違う…ここに来た理由はそう…。」
治崎に触れた手を少し動かしてみた。
「『薬』以上の対価がここにある?」
わざと上目使いで治崎を見上げた。
無いだろう。
治崎がゆらに触れれる理由の対価が、この『薬』以上のモノが。
「……それがお前の望みか?」
ゆらが体に触れている手を治崎が握った。
その時の治崎の手には、やっぱりアレルギー反応は無い。
ゆらはもっと治崎を動揺させたくて、彼の嘴に手を付けた。
嘴をゆっくり外していても治崎はなんの抵抗をもしない。
ああ、やっぱり今日も嘴の下にマスクをしている。
そこに治崎の他人を拒絶するほどの心情が見えた。
ゆらは目を細めてそのマスクに手を付けた。
まだ治崎はゆらを拒否しない。
「…こんなに協力してるんだからいいでしょ?」
治崎のマスクを外してみた。
背中がゾクゾクと悪寒の様な刺激が首筋まで走った。
それなのにやっぱりいつもの嫌悪感は無く、治崎は目の前にいるゆらの目を見ている。
この位では治崎は動揺しなくなっていた。
ゆらは心の中で舌打ちをした。
「……この位じゃ高くつきそうだね…。」
平常心でゆらを見下ろす治崎に顔が歪みそうだ。
「……分からない…。」
今度は治崎がゆらに触れてきた。
顔に治崎の手が触れて、その親指が唇に触れた。
「もっと等価で話をしてくれて。」
ゆらは見謝った様だ。
治崎の欲求はこれ以上先では無いと思っていた。