第17章 蒼炎の教育※治崎
ゆらはそう言って、治崎を睨んだ。
「……分かってる…。」
少しうんざりした顔で治崎が言った。
その治崎の顔にゆらはイラッとした。
頭に来ているのはこっちなのに、ゆらが無理難題を言っている気分だ。
ゆらは服を脱いで渡された手術服を着た。
着替えている間治崎は目を逸らそうともしないでゆらを見ていた。
別にその視線は気にならなかったので、さっさと着替えたゆらは手術ベットの様な椅子に座った。
今からまたあの苦痛を味わうとなると、目の前の治崎に怒りが湧いてくる。
「…ちゃんと治してよね。」
「…注文が多いな…。」
ゆらの言葉に治崎がため息混じりに言った。
当たり前の交渉なのにいちいち苛々させられる。
カチャッカチャッと聞こえる金属が当たる音。
自分から香る血の匂い。
刃物で切られた鋭い痛みが放置されて鈍い痛みに変わる感覚。
全てが不快だ。
さっさとこの時間が終わればいいのに。
気を失わない様に気を張っているのが大変だった。
血が流れて手足が冷たくなるのが分かる。
ゆらはその感覚に目を瞑った。
「………もう終わった…。」
ゆらが目を瞑ったからか、この前よりも短い時間で治崎はその行為を終わらせた。
カシャンとメスを置く音が聞こえてゆらは目を開けた。
治崎が手袋を外すのが分かった。
今からあの手で自分に触れるのだろう。
何故か破壊はされないと変な自信がある。
されるかも知れないのに。
彼が自分を見る表情を見ながらそんな事をゆらは思った。