第17章 蒼炎の教育※治崎
数日は動きが無かった八斎會に、ゆらは久しぶりに呼ばれた。
別に行かなくても良かったのだが、自分の目的も薬なだけに完成品は気になるところだった。
どうせ治崎の用事なんて、自分の血肉だと分かっていたから。
(……今度個性を消されたら……。)
その時は治崎を殺してしまおうか。
無抵抗で個性を消された時の屈辱を思い出して、ゆらはフッと笑った。
今の自分の考えは少しヴィランぽい。
そんな事は実際するか分からないが、あの研究所をめちゃくちゃに出来る位には暴れてやろう。
ゆらは自分とのキスで治崎にアレルギー反応が出た時の事を思い出す。
まぁ治崎もアレで懲りて、滅多なことはしてこないだろう。
いつもの様にお面を被りフードを頭まで被った。
「……………。」
迷路になっている地下に行くために、地上にもいくつかの入口がある。
ヒーロー事務所がマークしているのは分かっていたが、姿は見えないが間違いなく見張られている気配はあった。
だんだん近付いて来るヒーロー達に、ゆらも何故か追われる気分になる。
ゆらは慎重にその監視の目を掻い潜って地下へ潜った。
すぐに治崎の元に案内されると、そのドアは血の匂いが染みついたあの部屋だった。
やっぱりかと、ゆらは小さく舌打ちをする。
使えるものは使える内に搾り取ろうという事なのだろう。
それで完成品に近付く時間が短くなるならまぁ良かった。
「………………。」
部屋に入ると治崎だけが居て、お互い無言で見合った。
ゆらは画面とフードを取ると、治崎の前に立った。
「…分かってると思うけど、もう2度と個性は消さないで。」