第16章 蒼炎の思惑※荼毘・死柄木
しばらく2人で睦み合って、気がつくと死柄木の姿は見えなかった。
ゆらは取り敢えず情欲を吐き出した荼毘に抱き付いて、彼にキスを繰り返した。
荼毘は拒否こそしなかったが、最初ほどの情欲はもう無かった。
「……鎖外せ…。」
鎖を付けたままだったらエンドレスの様で、荼毘はゆらに言った。
ゆらは不満そうに荼毘を見上げた。
「…もう少し…。」
もう満たされた情欲はそこまで湧いてくる訳では無かった。
今はその余韻を感じて、荼毘と繋がっていたいだけだ。
「……轟焦凍とは…、どんな風に過ごしてるんだ?」
また荼毘の機嫌が悪くなりそうな質問にゆらは顔を顰めた。
何故わざわざそんな事を聞くのだろう。
荼毘は顔が離れたゆらの髪の毛を触りながらゆらの反応を見ていた。
「……そんな事聞いてどうするの?」
今この時間に話したい内容でも、荼毘に伝えたい事でも無い。
焦凍との時間は、ハッキリ言って荼毘と共有したく無かった。
死柄木の様な、情欲を楽しむ為だけの当て馬でも無い。
けど、荼毘はゆらの言葉に不満そうだ。
「……こっち側に居ると見せかけて、戻る所は轟焦凍の場所か?」
荼毘の鋭い指摘に表情を変えない様にするのに必死だった。
ゆらは確かに、焦凍と居る場所が自分の帰る場所だと思っている。
その時はきっと荼毘は側に居ない。
荼毘とずっと一緒に居る事は考えられないのに、焦凍と居る未来はすぐに思い付く。
荼毘をずっと好きだと思っていた。
でももしかしたらゆらもまた。
荼毘を好きでは無いのかもしれない。
荼毘の質問を聞いて、ゆらはそんな事を思った。