第16章 蒼炎の思惑※荼毘・死柄木
「ゆら。」
2人の間に入って来たのは死柄木だった。
ゆらは荼毘から死柄木に目線を移す。
定期集合の義務は果たしたはずだ。
ゆらに何の用があるというのだろうか。
…まぁそんな事、聞かなくても分かるけど。
荼毘なんかより死柄木の方が可愛いではないか。
「…いいよ。」
ゆらはニッコリ笑うと死柄木の方に歩いて行った。
荼毘を置いて。
「…アホか…。」
そんなゆらを荼毘は腕を掴んで引き留めた。
……うーん……何だかまだ足りない…。
「大丈夫だよ…すぐに終わるから…。」
ゆらはワザと意地悪っぽく荼毘に言った。
事実死柄木の用事は分かっている。
どうせ五指でゆらに触れたいのだろう。
彼の衝動はそんなモノだ。
だけどそれは荼毘を苛立させる事を知っている。
ギュッとゆらを掴む荼毘の手が強くなった。
ああ…本心にイライラしている様だ。
なら少しは死柄木の様に、素直になればいいのに。
「…荼毘…本当にすぐに済むって。」
荼毘の気持ちが分かっているのに、言う事を聞かないイライラが増している様だ。
そんな荼毘をゆらは目を細めて見上げた。
「…なら荼毘……『見てれば?』♡」
ゆらの言葉に荼毘はハッと笑った。
グッとゆらの顔を掴んで荼毘はゆらの顔を覗き込む様に言った。
「……なら、見せてもらおうか?」
どうせ物足りなくなって、自分に縋り付くゆらの姿を。
やっぱり荼毘は。
衝動の楽しさを知っている。
この衝動の楽しさを味わえるのはやはり荼毘と死柄木だ。