第16章 蒼炎の思惑※荼毘・死柄木
しばらくは、連合にも八斎會にも寄り付かなく真面目に学校生活を送っていた。
焦凍も追試試験の為に夕方まで遅く訓練をしていたし、綠谷達がソワソワしている以外はたいして気になる事は無かった。
八斎會にトガと分倍河原が合流したとを知ったのは、随分後からだ。
荼毘と会うのを避けていたのは、焦凍と過ごす時間が長くなったからかもしれない。
焦凍と居ると自分の場所はやはりこっち側なんだと思うようになった。
荼毘への感情は一時の。
そう、麻疹の様なモノなのだろう。
それでも夜になれば寮を抜け出して、荼毘を縛りに行きたくなる。
どうしようもない衝動を抑えるのに、焦凍には迷惑だろうが、自分から焦凍に会いに行ったりした。
そんな風に過ごしていても、一目見れば理性が飛んでしまう。
連合はゆらにとってそんな誘惑の場所だった。
ただの定期集合だった。
そんな連絡でさえ、受ければ真っ先に荼毘の顔を思い出す。
ああ…今日は会えるんだ。
自分が何になりたいのか、どうしたいのか。
いつも揺れ動いて結局答えは出さないでいる。
「よぉ、久しぶり。」
声を聞いて顔を見ればギュッと胸が締め付けられる。
「ここで縛るなよ。」
近付いてくるゆらに荼毘は念押しする。
また個性を使って人の前でゆらが裸になるのはいただけない。
じゃあ後で…。
なんで甘い言葉をかける前に荼毘への確認はする。
「…荼毘、どこに居たの?」
「……まぁ……転々としてたな。」
その言葉に他の女性の影を感じれば先ほどまでの気持ちは吹っ飛んで、急にイラッとするものだ。
荼毘を縛りたい欲望と、荼毘への怒りが喧嘩して、今日は素直になれなさそうだ。