第3章 蒼炎を愛慕する※荼毘
ギリギリと、荼毘の体に鎖が食い込んでくる。
どうやら、ゆらはお怒りの様だ。
ボキッと大きな音がして、荼毘の右腕が折れた。
(…あー、そろそろダメか…。)
「ゆら。」
荼毘は自分のすぐ目の前にいるゆらを見て言った。
「炎と煙の狭間探してみろ。」
「!?」
ゆらの前で、荼毘の体がドロっと溶けた。
「そこに『俺』がいる。」
鎖の中で、荼毘の体が消えた。
この荼毘は本体ではないだろう。
荼毘の個性は間違いなく炎だ。
誰か、別の人物の個性。
ゆらの目がギリっと歪んだ。
生徒に向かった脳無、報告、荼毘。
沢山の選択のある中、その時に頭の中で、声が聞こえた。
『戦闘許可!』
「っ…………。」
(脳無は荼毘の命令を聞いていた。)
ゆらはぎゅっと拳を握って、先ほど頭上から見た光景を思い出す。
炎と煙がせめぎ合っている場所。
そこに荼毘が居る。
ゆらは脳無に背を向けて、荼毘の居る場所に向かって走った。
「おい、またお前死んだぞ!」
トゥワイスが、どんどん無くなっていく荼毘のコピーの報告をする。
「…全然足止めになんねぇな俺、何処の俺だ?」
「脳無と一緒にいたお前だ。」
「………………。」
プロヒーローに送ったコピーでは無い。
脳無が居るなら、そんなに簡単に、自分のコピーがやられるはずも無い。
脳無も無事な様だ。
考えて出た答えに、荼毘はハッと笑った。
「心配ねぇトゥワイス。」
口元を押さえて、顔を上げた荼毘は嬉しそうにトゥワイスに言った。
「俺がやられてやる雄英のガキなんて、1人だけだ。」
荼毘はそれがゆらだと、気が付いて、笑みを浮かべた。