第15章 蒼炎の休日※轟焦凍
「いいね、見に行こう。」
ゆらがそう言うと、焦凍は安心した様に笑った。
絶対に色々調べて来ただろう焦凍が可愛い。
同じ位のコミュ力と思っててごめん。
ゆらもそれなりに週末を楽しみにしていたはずなのに、焦凍と違ってノープランだった事に罪悪感を覚えた。
多分コレが世間で言う恋人関係なのだと改めて思った。
焦凍の様に毎日会いたくて、週末はこうして2人で出掛けて。
決して荼毘とは出来ない関係性だし、荼毘にこんな事は求めて居ない。
コレで心が満たさせると言うのであれば、荼毘に求めている自分の感情は何なのだろか。
そんな事を考えながら笑っている焦凍の手を握って何だか虚しくなった。
初めて映画館と言う所に来たが、その後を焦凍は何も分からないゆらの代わりに全て用意してくれた。
焦凍が用意したチケットとドリンクを持って、寝てしまうのでは無いかと思えた映画も楽しく見れた。
映画が終わる頃には、ちょうどお昼になっていた。
スケジュールまで完璧だ。
「ゆら、俺が行きたい店があるんだけど。」
特に食べたいモノも浮かばないゆらは焦凍の提案に頷いた。
焦凍に案内されたお店はお蕎麦屋さんだった。
「俺蕎麦が好きなんだ。」
はにかんで言う焦凍がまた可愛くて胸がギュッとなる。
焦凍はざる蕎麦を頼んだ。
どうやらザルの蕎麦が好きみたいだ。
彼の好きな食べ物を初めて知った。
こうしてお互いに好きなモノを少しづつ知っていく関係が何だか尊い。
本当にこの関係がずっと続くのだろうかと疑問に思えて、この時間が刹那的に思うと胸が少し痛んだ。
きっと焦凍はゆらの全てを知ったら今みたいに笑って隣に居てくれなくなる。