第15章 蒼炎の休日※轟焦凍
「……ふふ…朝からじゃなかったの?」
深夜にベランダに現れた焦凍を見て、ゆらは笑って焦凍に言った。
焦凍は照れ臭そうに、それでも笑って受け入れてくれるゆらに惜しむ事なく気持ちを伝える。
「…だって…全然連絡もくれなかったから…。」
それなのに急に現れていつもの様に笑って接してくる。
早く抱きしめたくなって何がおかしいのだろう。
「ゆら…。」
焦凍はゆらの名前を呼んで抱き締めた。
ほんの数日会わなかっただけでゆらが何処か違う人に見える。
それまで彼女の天真爛漫さは、然程気にならなかった。
だけど、こうして自分の見えない所でどんどん変わっていくゆらを感じると。
理由も分からないのに、漠然と不安が押し寄せてくる。
焦凍はゆらの顔に触れるとキスをする。
そのキスを受けてゆらはゆっくりと目を閉じた。
焦凍がこうしてゆらに触れる事に執着してくるのは、不安だからだと分かっている。
なのに自分は焦凍を安心させてあげられる言葉をかけてあげられなかった。
ちゅっちゅっと、唇が触れる音が部屋に響くと。
焦凍はゆっくりとゆらをベットに寝かせた。
自分の行動に素直に従うゆらを見下ろすと、彼女は切なそうに笑って自分を見ていた。
その表情の理由を聞きたいし、聞きたく無かった。
ゆらからは何度も何度も、焦凍がゆらを好きになる事への牽制を受けている。
それを無視してこうして無理矢理側に居るのだから、ゆらの愛で自分を安心させて欲しいなんて気持ちは、贅沢な悩みだと分かっている。