第14章 蒼炎遊戯※治崎廻・荼毘
グッとベットに押し付けられて荼毘の顔が息がかかる位に近づいた。
「お前のその衝動がまともだと?」
荼毘の歪んだ顔が明らかに憎悪に満ちていて。
そのヴィランらしい顔にゆらは眉間に皺を寄せた。
「……俺が一般人だったら鎖で襲わなかったか?我慢出来たと?」
ゆらの表情がよく見える様に顔にかかっている髪を掻き上げた。
「一般人だったら俺を欲しなかったのか?」
荼毘の顔がゆらの頬を掠めて、耳元で囁いた。
「鎖は使わなかったと?」
あの時のお互いが何かに駆られる様に身体中を突き抜けた衝動は無かったのか。
それはヴィランとヒーローだから起こった瞬間だったのか。
「……いつも言ってるじゃない……。」
ゆらはスッと荼毘から顔を離して今度は自分から荼毘の耳元で囁いた。
「荼毘以外にそんな衝動になった事無いって。」
分からないかなぁ。
何処までいっても荼毘だけが特別なんだ。
「…良かったなぁ、俺がヴィランで。
お前の衝動は正当化される。」
荼毘はニヤッと笑ってゆらを見下ろした。
「そうね…私はヴィランでなければならない理由はないわ。」
ゆらはグッと荼毘の胸元の服を掴んだ。
「荼毘は何でヴィランなの?」
グッと顔を荼毘に近付いて2度目の質問をする。
まるで荼毘がヴィランである事がパフォーマンスに思えた。
『そっち側』の方が都合が良かったのだろう。
……そう…例えば……。
「荼毘はヴィランになって誰を傷付けたいの?」
見せつけたい相手が居るのだろう。
点数を付けて貰えなかった自分がどうなったのかを。