第14章 蒼炎遊戯※治崎廻・荼毘
それでも何でヴィランになったかの答えが分からなかった。
だって……。
「それはヴィランになる程の衝撃だったの?」
荼毘の鼓動がドクンと大きくなった。
「はっ…。そんなヒーローを排除したいからヴィランなんだろ?」
荼毘は胸に居るゆらの顔を掴んだ。
「お前だってそうだろ?」
荼毘の目が静かな怒りの炎をチラつかせながらゆらを見た。
ヒーローを排除する。
そんな感情はゆらに無かった。
「……別に私はこの世界でもその均等を壊さずに生きていけるよ。」
そう言ったゆらを荼毘は馬鹿にしたようにハッと笑った。
誰構わず個性を使っていい世界なんて望んでいない。
ゆらは目を細めて荼毘の顔に触れた。
「可哀想に、荼毘は弱いから劣等生だったんだね。」
ゆらが哀れみのような目で自分を見てくるので、自分の顔が不愉快さで歪んだのが分かる。
嫌悪感をあらわにされているのに、荼毘のその表情を見てゆらは目を細めて笑った。
「荼毘、誰に認めて貰いたいの?」
荼毘のその目が自分に向けられていないのが分かる。
それに対する苛立ちと悔しさで、今荼毘を傷付けたくなった。
悔しかった。
「私がここにいる理由は荼毘なのに。」
荼毘が居なかったら、連合に潜入する事すらしなかっただろう。
それなのに荼毘は自分以外の誰かをいつも思っている。
あの合宿の日に、月を見上げながらこれから雄英を襲撃するその時に。
あの目で荼毘は誰を思い浮かべていたのだろう。
「……お前が連合に居る理由が俺だって?」
荼毘は顔を歪めながら笑ってゆらの肩を掴んだ。