第14章 蒼炎遊戯※治崎廻・荼毘
「……荼毘って何でヴィランになったの?」
荼毘の手が体に触れてからゆらは聞いた。
触れていた手を止めて、荼毘はゆらを見た。
「……今日はお喋りの気分か?」
フッと荼毘は笑って体を起こした。
自分の横に寝っ転がった荼毘を、今度はゆらが体を起こして見下ろした。
「………連合に入ったきっかけはステインだったな……。」
話してくれるんだ……。
自分から話を振っておいて素直に答えてくれる荼毘にビックリした。
「『ヒーローとは自己犠牲の果てに得る称号でなければならない。』」
「称号が欲しいからヒーローになったり、手の届かないヒーローの称号を欲しがって家族すらどうでも良くなって……。」
荼毘の声が、ポツリポツリと聞こえる。
ああこの目は、あの夜に荼毘を初めて見た時の目だ。
ゆらは荼毘の胸に頭を置いて彼の鼓動を確かめた。
ゆっくりと静かに動いている。
この話に感情が揺さぶられる事は無い様だ。
「お前らだってそうだろ?体育祭やら常に順位付けられて、指名で来た事務所はランキングとかで選ぶんだろ?」
「既にヒーローになる為の志ってやつより、個性の強さや血統で選ばれるだろ?」
………そうなのかな?
「なぁ…。」
きっと荼毘の言いたい事の半分は理解出来なかったかもしれない。
「番号すら貰えなかった奴らは何処に行くんだ?」
荼毘がそう言った表情に目を細めた。
確かに個性が使えなくなって、もしコレが一生だったら。
公安は私を捨てるかもしれない。
ホークスは?最初は気にかけてくれるかな?
そしていつか、住む世界が変わったら、ゆっくりと忘れられていくかもしれない。