第14章 蒼炎遊戯※治崎廻・荼毘
普段は憎たらしいその声が、今はとても心地よかった。
「……死柄木…。」
まさか部屋の中で治崎とゆらがキスをしているなんて誰も想像しなかったのだろう。
普通に死柄木はゆらの元に案内された様だ。
……可哀想に、死柄木を案内したあの人物がこの後治崎に殺されないだろうか。
余計な心配だなと、ゆらは死柄木に腕を伸ばした。
眉間に皺を寄せて自分に擦り寄ってくるゆらに、死柄木は目を歪ませる。
ゆらに何があったのかは、まだ体に染み付いている血の匂いが教えてくれた。
やっと安心出来る人に保護されて抱かれているゆらの姿は。
年相応の子供の様だった。
「………研究は断ったはずだが?」
服から出ている部分を見ても、ゆらに傷は無い。
治崎が治したとすぐに分かった。
「…それは合意だ…。」
「……………。」
死柄木は治崎の言葉を聞くと、チラッとゆらを見た。
なら、この眉間の皺は別な理由のようだ。
「………死柄木…もう帰る…。」
早くこの場を出たかった。
ゆらはそう言うと、死柄木にぎゅうっと抱き付いた。
ゆらが鎖で縛らないのにこんなに抱き付いてくるのは珍しい。
(……ああ、出せないのか…。)
やっとゆらの眉間の皺の理由が分かった。
もし強制的に個性を奪われたのなら、ゆらにとっては屈辱的な事だろう。
何故ゆらが荼毘か自分を呼んだのか分かった。
死柄木は五指が触れないようにギュッとゆらを抱き抱えた。