第14章 蒼炎遊戯※治崎廻・荼毘
さっきまでゆらを尊重していると言っていた癖に…。
強く握られた治崎の腕にゆらはハッと笑った。
治崎の腕がお腹から上半身に動いてゆらの顔に触れた。
「……この腕を払ったら、私を殺すの?」
「……そんな事はしない…。」
「…………。」
なら払ってみようか。
ゆらの体にグッと力が入った。
「っ?!」
その瞬間クルッと体が反転したのはゆらの方だった。
ベットに横になり天井と治崎を見上げた。
ゆらの手首が治崎の手にギュッと掴まれている。
「…………。」
男の人との力比べは流石に勝てそうに無い。
「…… ゆら…。」
「!?」
次の治崎の行動には流石に目を見開いた。
治崎が嘴の様なマスクを外したのだ。
嘴のマスクの下にはさらに黒いマスクを装着していた。
ソレでも治崎が嘴のマスクを人の前で外すと言う行為にどれほどの意味があるのか明確だった。
試したいのだろう。
唯一触れられるゆら相手に、何処まで出来るのか。
「……他人を求める感情なんて無いと思ってた…。」
ゆらは治崎を見上げて皮肉っぽく笑って言った。
そんなの…。
「無かったさ…。」
ゆらに会って、ゆらに触れられると分かるまで。
誰かに触れたいなんて、少しも思えた事が無い。
だけど今は目の前のゆらを見て触れたいと。
自分が何処までゆらに触れられるのか試したいと。
ゆらを目の前に、そんな昂る感情しか湧かなかった。
そして治崎が黒いマスクに手をかけた。