第14章 蒼炎遊戯※治崎廻・荼毘
「……はぁ……はぁ……はぁ……。」
多分今まで生きたい人生でここまで自分の血の匂いを嗅いだのは初めてだ。
ポタッポタッと床に滴る水音が自分の血である事が容易に想像出来た。
体は動かない様に固定されて、ゆらはただその音を聞いているしか出来なかった。
(一滴残らず大切に使え…)
ゆらはその音を聞いて、痛みで支配される頭で悪態を吐く。
そんなゆらの姿を見て治崎は意外にも無表情だ。
ただ真剣に彼女の体を刻んでいく。
まぁここで笑顔ならサイコパス過ぎて怖い。
ただ欲しかった抹消の血肉に興がのり過ぎでは無いだろうか。
失血のし過ぎで意識が飛びそうなんだが…。
治崎は唇の色が白くなり、目が虚になってきたゆらをチラッと見た。
「………今日はここまでにしようか…。」
そう言うと、治崎はメスを置いて手袋を外した。
ゆらはその行動を見て目を顰める。
今からあの手が自分に触れる。
そう思うといい様の無い嫌悪感が痛みより大きくなる。
やっぱりダメだ。
ゆらは鎖を使わずに荼毘と抱き合った先日の事を思い出す。
(…私に無条件で触れていいのは荼毘だけだ。)
そう思ったら自分の手から鎖が出て治崎の手を縛った。
ゆらにとって個性持ちに無防備に触られる事は、裸を見られるより屈辱的だった。
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
治崎は吐く息すら弱くなっているゆらを目を細めて見下ろした。
「………はは……やっぱり貴方は無理だわ…。」
青白い顔でゆらはそう言うと目を瞑った。