第13章 蒼炎を夢想する※荼毘
(…エンデヴァー……。)
焦凍のお父さん…。
ゆらは以前に、焦凍に過敏に反応した荼毘を思い出す。
今彼の顔色を伺わない変わりに、ゆらは荼毘の背中のコートをぎゅっと握った。
「……つまらない話するなよ…。」
荼毘は義欄にそう言うと、ゆらの肩を抱いて部屋から出て行った。
廊下を歩く荼毘のスピードがいつもより早い気がした。
荼毘とエンデヴァーと焦凍。
凄く気になる。
だけど荼毘がその話をしたく無いのが、彼の背中を見ているだけでも分かった。
荼毘が部屋のドアを開けると、すぐにゆらを中に入れた。
部屋の中はベットだけしか家具が無いような簡素な作りになっていた。
(……床抜けないかな…。)
廊下もそうだったけど、歩くとギシギシ床が鳴った。
「っ!?」
すぐに荼毘がゆらを抱き上げたので、ゆらは自分より目線が下になった荼毘を見下ろした。
さっきからずっと背中しか見ていなかったから、荼毘がどんな顔しているか心配していたけど、見上げる荼毘はいつもの表情だった。
そう…いつもの様に愛おしそうにゆらを見上げている。
「…荼毘…。」
ゆらは目を細めて荼毘にキスをした。
クチュ、クチュッと2人の舌が絡まる音が響く。
治安の悪い場所なのか、外は酔っぱらいや喧嘩の声でうるさかった。
この部屋だけ時間が止まった様な静寂に包まれている気がした。
「…ねぇ荼毘。」
おねだりする様にゆらは荼毘の顔を両手で掴んで、彼の名前を呼んだ。
正直、ゆらのおねだりにいい思い出が無い荼毘は顔を顰める。
「今日は普通にSEXしたい。」