第13章 蒼炎を夢想する※荼毘
選べと言われても楽しく無いショッピングだ。
ゆらはボーッと壁一面の仮面を見ていた。
「!?」
急に大きな殺気がゆらを襲った。
振り返って鎖を放っていたら、間違い無く出遅れて死んでいた。
急な死に直面して、ゆらの五感がフルに働いた。
刹那の時間の中、振り返る事なく強い殺気に向かってゆらの鎖は放たれた。
ガシャン!ガラガラガラっ…!!
「…はぁ…はー…はー………。」
ゆらは冷や汗が出て目の前に居る治崎を見上げた。
治崎の手が壁にぶつかり、仮面を床に散らばせた。
鎖が彼の腕に巻いてなかったら、間違い無く死んでいた瞬間だった。
「はっ…はは…もう殺すの?」
「……いや、コレは試しただけだ。」
明らかに、高校生にしてはプロヒーローを相手にしている様な反射神経だ。
しかもザコヒーローなんかより、遥かに身体能力が高い。
何度か死に直面して、体がその感覚を覚えている。
コレだけの動きをするのに、どれだけの努力をしたのだろうか。
治崎自身もそうだった様に、この歳での個性の操り方は相当自分を追い詰めた様だ。
(……そして……。)
治崎はチラッと自分の腕を見た。
蕁麻疹は出ているモノの、いつもより酷く無く。
そして何より、心身的なあの凄まじい嫌悪感が無い。
治崎はゆらの肩をグッと掴んだ。
「…お前の抹消の個性。実験に欲しい。」
後少しで完成品が出来る。
イレイザーより遥かにいいサンプルが手に入った。
何せ、直接血肉が手に入る。