第13章 蒼炎を夢想する※荼毘
治崎の眉がピクッと動いた。
どうだろう治崎。
沢山駒を取っても、強い駒を取られたら少しはイラッとしないだろうか。
「……リーダー、弱いですねぇ。」
「五月蝿い。」
チラッと死柄木を見てゆらは笑って言った。
ねぇ死柄木、貴方は簡単に駒は取られないでしょう?
そうじゃ無かったら、困るのはゆらの方だ。
「……黒霧の変わりはコイツだ。」
うん。
絶対そう言うと思ってた、この人でなしめ。
「駄目だよリーダー、私は高校生だもの。」
現役の高校生がこんな所に出入りしては目立つだろう。
「高校生?」
治崎がピクッとゆらを見て言った。
その曇った治崎の表情に、ゆらは笑って言った。
「貴方達が普段、ヒーローに目立たない様に活動している様に、私のかくれみのは雄英なの。」
よりによって雄英だ。
そちら側にとってはリスクが高い物件だろう。
「アレ付けてろよ。」
死柄木はクロノのマスクを指差して言った。
うん。
普段から手のひらを付けている貴方からしたら、どうでも無いお面だろう。
面白そうに言う死柄木に、ゆらはイラっとした。
「…それでいい。」
治崎の了承を得て、ゆらはバッと治崎を見た。
(……何を考えているのだろう…)
治崎のその表情からは何も読み取れなかった。
「……何も出来ませんよ〜、一介の高校生です。」
ゆらが何と言おうと、コレは決まった事項の様だ。
冷めた目でゆらは治崎を見た。
残念な事に、あの男に個性の衝動は何も無かった。
つまり、コレはただつまらない潜入だ。