第13章 蒼炎を夢想する※荼毘
「殺風景な事務所だな。」
「ゴチャついたレイアウトは好みじゃ無いんだ。」
地下のせいか窓も無い。
息苦しく感じるのは部屋のせいか、その場に居る人間のせいか。
ゆらはチラッと治崎達の配置を確認した。
勿論、いざとなれば自分が逃げる為に。
スッと横に移動したゆらを、治崎がチラッと見た。
素知らぬ顔をしているが、そのゆらの行動で、彼女の心情はバレたかもしれない。
ゆらはニッコリ愛想笑いで治崎を見た。
(…読めない男だ。)
治崎は若頭と聞いている。
まだ実質的に八斎會のトップでは無い。
自分の好みに事務所のレイアウトを変える位は実権を持っている様だ。
「地下をぐるぐる30分は歩かされた。
蟻になった気分だ!
どうなってるんだヤクザの家ってのは。」
イライラしながら死柄木が言っている。
あの無言の中、そんな事を考えていたのかと。
さりげなく死柄木の動きに合わせてゆらは配置を変える。
不機嫌な死柄木の巻き添いを食らわない様に。
「誰がどこを見ているか分からないし、客が何を考えているか分からない。
地下からのルートをいくつか繋げてある。
この応接間も地下の隠し部屋にあたる。」
つまり入った瞬間から、案内人の他にも監視していたという事か。
これは逃げるのも一苦労そうだ。
「うちが今日まで生き残っているのも、こういうせせこましさの賜物さ。」
何かちっちゃいのが喋っている。
小さいのに可愛いとは思えないので、ゆらは興味なさそうにそこで空気になる。