第12章 蒼炎と緋※荼毘・死柄木
「そんな快楽集団、コッチからお断りだよ。」
ドンと荼毘の胸を押した。
「心配しなくてもちゃんと護衛するって死柄木に言っておいて。」
ゆらがイライラしながら荼毘に言うと、荼毘の目が細くなる。
荼毘の手がゆらの顎を掴んだ。
「死柄木はどうでもいいが、俺は裏切るなよ。」
顔を覗き込む様に荼毘は言った。
今にも襲いかかってきそうな荼毘の顔に、ゆらは顔を歪めた。
「…裏切るって何?私なんか荼毘と約束したっけ?」
ゆらの言葉を聞くと荼毘はハッと笑った。
そうだな。
別に何かを約束した恋人というわけでも無い。
ゆらが荼毘に誓える事なんてただ1つだ。
荼毘の最後の時に縛っているのは自分だ。
なのに荼毘は最後の時をゆらと過ごす気は無さそうだ。
荼毘の目の奥に誰が写っているのかすごく気になった。
その荼毘の感情を全て自分にぶつけて欲しいと、荼毘にお願いしたところで叶いそうにない。
「…荼毘は何が誓えるの?」
「俺が?お前に?」
ゆらの言葉に荼毘は笑った。
「私は荼毘の全部が欲しい。」
「はっ…そんなの…。」
同じ事思ってるさ。
そしてそれが無理なのも分かってる。
荼毘はゆらより自身の目的を優先し。
ゆらもまた荼毘以外の個性の衝動を抑えられない。
ただ側に居るだけの2人だ。
それなら、コレだけは誓って貰おうか。
その最後の瞬間が来るまでは、この虚構の時間の刹那だけは。
この手を繋いでいようか。
荼毘はゆらの手をぎゅっと握った。
そしてゆらの鎖が荼毘の手に巻き付いた。