第12章 蒼炎と緋※荼毘・死柄木
目を覚ますと、自分が取っているホテルだった。
「……よぉ……。」
ベットに寝ていて、目をキョロキョロさせていると、荼毘の顔が見れた。
運んで来てくれたのは荼毘なんだろう。
しばらくぼーっと考えて、頭の中を整理した。
思い出してガバッと体を起こす。
「……何だったのアレ?」
「お前が何なんだ。」
戸惑いながら荼毘に聞くゆらに、呆れた様に荼毘が言った。
死柄木を縛った瞬間に意識が飛んで、そこからは正直うる覚えだ。
ただ本能に従って死柄木と荼毘を縛って。
死柄木に喰われた。
言いようの無い敗北感がゆらを襲った。
死柄木単体を縛ってもあんな事にならない。
悔しさで涙が出そうになる。
「……悔しい……。」
呟いたら、涙がポロポロ流れた。
荼毘はゆらの肩を掴むと、ゆらをベットに押し付けた。
涙で滲んだ荼毘の顔が見える。
「……死柄木から伝言。」
薄っすらと死柄木が最後に言った言葉が頭の中に浮かんだ。
「次に会う時までに、人1人殺せ。」
荼毘の言葉にゆらの目が歪んだ。
死ぬ気で自分を守れと言う事なのだろう。
いざという時に躊躇うなと。
ゆらは大きく息を吐いた。
公安でもそんな様なニュアンスの教育はされている。
最前線に出た場合の命の選別。
だが、これはまた話が違う。
「ヤダ。」
「やれよ。」
ゆらは荼毘を睨んだ。
「……私は生きづらさを感じているけど、その為に人を殺そうなんて考えてない。」
荼毘の目がぎゅっと細くなった。