第12章 蒼炎と緋※荼毘・死柄木
ゆらは吐息を吐いて、死柄木を見下ろすと、鎖を増やした。
「こんなんじゃダメだよ、もっと縛らせて…。」
ゆらは鎖をぐるぐる死柄木に巻き付ける。
「…お前…すぐ死にそうだな。」
死柄木がご機嫌にゆらの腰を五指で触った。
ゆらはそんな死柄木に目を伏せた。
死柄木だってゆらに触れたかったのだろう。
手の感触を確かめる様に動かしていた。
「こんなになるの荼毘と死柄木だけだから大丈夫。」
そう信じたい。
こんな安い報酬で命を張らなきゃいけないのは虚しすぎる。
ゆらは気が済むまで死柄木を巻き付けると、ギュッと鎖を握った。
強くなった締め付けに、死柄木の目が歪んだ。
………知っているだろうか死柄木。
貴方だと私は荼毘と違って、いつもこの鎖を強く締め付けたくなるんだ。
荼毘と同じ様で違う死柄木への衝動。
「…死柄木…簡単に許しちゃダメだよ。」
そう言ってゆらは死柄木に顔を近付けた。
いつだってその首を狙っているのだから。
ゆらの唇が死柄木に触れる前に、ゆらの唇に手が触れた。
グッと掴まれる顔に、ゆらは目を顰めてその手の主を見上げた。
「…俺は今焼けるぞ?」
すぐに死柄木から離れろと、荼毘の目が言っている。
可愛い嫉妬だろうが、衝動を抑えつけられる事はゆらが1番嫌がる事だ。
ゆらは荼毘の手をガブっと噛んだ。
「っ動物かっ。」
荼毘はゆらの顎を掴んで顔を上げさせる。
ゆらの顔は、自分の至福の時を邪魔した荼毘への恨みの顔だった。