第11章 蒼炎と鎖※荼毘
「昨日電話した。」
「うん…。」
電話に出て貰えなかった轟に、中休みを奪われている。
準備室でゆらを机に座らせて、轟はゆらの顔を覗く様に見ている。
その目を真っ直ぐに見れなくて、ゆらは目を伏せてしまった。
ゆらの行動に、轟の顔が歪んだ。
荼毘が居る間に轟の電話に出たのなら、焼いてくれと言っている様なモノだ。
轟はゆらが目を逸らした理由を分かっている様だった。
申し訳ない気持ちから、轟の顔を見て胸がチクッと痛んだ。
だから言ったのに。
そんな事は轟には思わない。
ただひたすら申し訳なくて、彼の顔が見れないのだ。
自分の目と同じ色をした、ゆらの好きな男はヴィランだ。
そんな男に会っていたと言うなら、やはりやり切れない思いが強い。
「……轟、傷付いた?」
「うん。」
ゆらが何も言わなくても、轟は荼毘と会っていた事は分かっている様だった。
「…それでも好きだから。」
轟の唇がやっとゆらに触れた。
きっとキスや、もっと先の事も、ゆらはその男として来たのだろう。
自分が仮免の補習に明け暮れている間に、どんどんゆらの世界が勝手に広がっていく様だった。
ゆらは轟の腕を触って、補習で出来た傷を撫でた。
普通の恋人なら、こんな時には彼氏を支えたりするのだろう。
「…ゆら…。」
唇が離れて、轟が尋ねる様に聞いて来た。
「俺がそいつを捕まえたら、どうする?」
ゆらは自分の事を恨むのだろうか。
轟の目がぎゅっと歪んだ。
「轟が捕まえる前に、私が捕まえているよ。」