第10章 蒼炎の衝動※荼毘
ゆらのヒーロースーツをグッと剥いて、現れた胸元に目を細める。
「……随分と愉しんでたみたいだなぁ、ゆら。」
ああ、轟の痕か…。
一瞬、轟の笑顔が浮かんだ。
ごめん、轟。
やっぱり荼毘への衝動には敵わない。
「…沢山いる様だな、俺へと同じ気持ちって奴は。」
荼毘はジャケットを脱いで、ため息を吐きながら言った。
「え?」
「?」
ゆらは荼毘の言葉に不思議そうに声を漏らした。
「…居ないって…荼毘と同じ気持ちになる人なんて…。」
「…………。」
荼毘はゆらの言っている事が理解出来ない。
個性の衝動=ゆらの性欲だと思っているから。
「…縛らないのか?」
「まぁ、いいよって言われれば。」
だって個性の衝動が無い。
荼毘は逆に不思議だった。
「…お前って縛らなくても、性欲ある訳?」
「…荼毘って私の事、何だと思ってるの?」
荼毘の言葉に、呆れた様にゆらは言うが、逆に不安になる。
それが出来るのなら、自分に対する気持ちの方が、ただの性欲では無いか。
「はぁ…荼毘まだ続く?」
ゆらは腕を伸ばして、荼毘の首元に手を巻き付ける。
何だか荼毘の表情が良く無い。
「…お前、本当に分かんないのか?」
荼毘の言葉に、ゆらは顔を顰めた。
その顔はまだ続くのかと言っている。
「ゆら、俺は今お前に腹が立ってる。」
ゆらの何で?と言う顔が余計腹正しい。
「お前、今日は俺を縛れると思うなよ?」
荼毘はそう言って、ゆらの服を剥いだ。
今日はどんに縋って泣いてきても、絶対に縛らせない。