第10章 蒼炎の衝動※荼毘
荼毘の腕が、ゆっくりとゆらの腰に回る。
「…楽しめなかったようだな?」
ゆらの顔を伺って、荼毘は笑いながら言った。
その荼毘の笑顔に、ゆらは顔を歪めた。
「……荼毘、私に怒ってるの?」
だからヒーローを殺したの?
ゆらの問いに、荼毘は目を細めてゆらの顔に手を触れた。
「……お前は何なんだ?」
ゆらの反応を確かめる様に、荼毘の目が覗いてくる。
「親が居なくて、生まれた時から施設育ち。」
「中学校まで施設に住んで、高校でいきなり雄英。」
荼毘はゆらを探った様だ。
「おかしいだろ?お前の個性の使い方は普通じゃ無い。」
雄英で個性の使い方を覚えたと言うのは、無理があり過ぎる。
何のゆらを探っても、ただの孤児の少女に過ぎなかった。
そしてこの強い衝動で、事件を起こした形跡もない。
ゆらは荼毘の言葉に、目を伏せて目線を逸らした。
荼毘がいくら探っても、公安やホークスは出てこないだろう。
関係者を監禁して拷問でもしない限り、表を探った位では国の機密事項に辿り着ける訳が無い。
「だから、私に怒っているの?」
荼毘はゆらの言葉に目を細めた。
「…お前が。」
グッとゆらの頭を掴んだ。
「こっちに来ないから…。」
そう言って、ゆらにキスをした。
荼毘のキスを受け入れて、ゆらはやっと荼毘の肩に触れた。
くちゅっちゅっと、舌が絡まる音が部屋に響いた。
何度も舌を絡めて唇を合わせているのに、ゆらの手が荼毘の肩から動かない。
『普通』にキスを返してくるゆらに、荼毘の目が歪んだ。