第10章 蒼炎の衝動※荼毘
チラッとゆらを監視している公安ヒーローを見た。
本当に書かせたいのは、その事についてだろう。
死んだ彼に。
ゆらが何かを思う事は無かった。
ゆらがペンを置いて紙を渡した。
公安ヒーローが受け取ると、すぐに軽く読んでいる。
その光景をボーッと見ていた。
「……帰っていいぞ。」
そう言われて、ゆらは事務所を出て自身が取っているホテルに向かった。
何故かゆらが殺したかの様な、嫌な気分になった。
ゆらはため息を吐いて、部屋のドアを開けようとした。
カードキーをかざそうと出した手を止めた。
部屋の中にある気配に目を細めた。
ガシャンとキーが下がる音がして、ゆらはゆっくりとドアを開けた。
「…よう…。」
薄暗い部屋の中に、人影が見える。
「さっきはどうも。」
ニヤッと笑ってソファに座っている荼毘に、ゆらの口角が上がった。
ゆらは部屋の中に入り、ドアを閉める。
パチっと電気を付けると、ハッキリと荼毘の姿が現れる。
「どうした?久しぶりだから照れてるのか?」
立ったまま荼毘を見ているだけのゆらに、荼毘は揶揄う様に言った。
「……荼毘…私が怖くないの?」
ゆらの問いかけに、荼毘は首を傾げる。
「貴方を捉えて、ヒーローに渡すと考えないの?」
先程あんな事があったのに、こうして平然と目の前に現れる。
ゆらを殺す気も無さそうだ。
「……ゲームだったんだろ?」
荼毘がこっちに来いと手を差し出した。
ゆらはゆっくりと歩いて行き、座っている荼毘の前に立って、彼を見下ろした。