第9章 蒼炎を悔悟する※轟焦凍
抗えなかった。
もう、轟にときめいているのか、衝動に胸を弾ませているのか。
分からなかった。
唇が触れると、すぐに轟の口の中に舌を入れた。
少し前まで、轟を縛っても、触れたい衝動は無かったはずだ。
ゆらは薄っすら目を開けて、喜んでゆらのキスを受け入れる轟を見た。
何で今、轟に触れたいと思いキスをしているんだろう。
その答えは酷く簡単だった。
「…轟、目開けて。」
キスをしている時に見せて。
荼毘と同じ蒼い目を。
それは轟にとって、酷く傷付く言い方だったかもしれない。
そんな事は、この衝動の前では小さな事だった。
傷付いた轟を、見下ろすのも、また一興だった。
なのにゆっくり目を開けた轟は。
ゆらと目が合うと、にっこり笑った。
嬉しそうに、ゆらに手を伸ばして、頬に触れて愛おしそうに撫でる。
その轟の行動に、ザワッと背筋がざわめいた。
こんな加虐心を持ったのは初めてだった。
ゆらの言う事に素直に聞く轟を、傷付けたい。
轟を掴む手に力が入った。
「ゆら、大丈夫……。」
何かに気が付いた轟が、ゆらを宥める様に言う。
「…轟…、私は理性の無い獣じゃ無い。」
ゆらの目がギュッと歪んだ。
そんな風に宥めて、懐柔しようとしないで。
「…そんな事思ってねぇよ。」
轟が、ゆらの腰にギュッと頭を押し付けた。
明らかに轟は、ゆらに服従している。
なのにその姿を見て、酷く腹が立った。
「っ轟…。」
彼の肩を掴んで自分から離そうとする。
轟はスッと目を開けて、腰から背中へ手を移動させた。