第9章 蒼炎を悔悟する※轟焦凍
目を逸らしていた轟が、ゆらを見た。
少し顔を赤らめて、目を細めている。
それでも真っ直ぐゆらを見て、轟は言った。
「……うん…。」
轟の声が聞こえると、ゆらは目を伏せた。
「……………。」
いつもの自分なら、どうしていただろうか。
喜んで、轟に笑顔を向けて、夜の約束でも取っていただろう。
彼が縛られて、困惑している顔は、とても気持ちを高揚させた。
ソレが最近なのに、凄く昔の感情に思えた。
何も言わないゆらに、轟が困っている。
「……私、轟の顔が好き。」
「…うん。」
少し緊張して、顔を赤くしている轟を見た。
「轟の蒼い目が、特に好き。」
「うん。」
ゆらは柔らかく目を細めた。
「私が好きな人と同じ色だから。」
ザザッと2人の間に風が吹いた。
風が髪をなびかせて、視界を邪魔するから。
だからゆらは目を閉じた。
風の音に消されずに、ゆらの声は轟に聞こえただろう。
しばらく無言が続いて、ゆらは邪魔な髪を掻き上げた。
「…俺も…。」
轟の声が聞こえたので、ゆらはゆっくり目を開けた。
「秤の顔が好き。」
その言葉で、少し微笑んで目を伏せた。
「俺を縛って楽しんでる顔も。」
轟の言葉に、瞑りかけた目を開けた。
「そんな光景で、悶絶している訳が分からない姿も。」
「俺の……蒼い目を見て、誰かを思っている顔も。」
轟の顔を見た。
彼は目を逸らさずに、真っ直ぐゆらを見ている。
彼の言葉を止めようか。
そんな気持ちが込み上げてくるのに、口は開かずに、轟の言葉に耳を傾ける。
「全部好きだ。」